【アーチ型(持送りアーチ)】
持送りアーチ(コーベルアーチ、corbel arch)は、持ち送りという建築技法を使ったアーチ状の構造。壁に入り口などの開口部を作って上部をまたぐ構造を作ったり、橋を渡す構造を作るのに使う。 持送りヴォールト(corbel vault) は、この技法を使って屋根などの建物の上部構造を支持することをいう。
持送りアーチは、両側の壁の先端から石を徐々に張り出すように積んでいき、アーチの頂点でそれが繋がるようにしたものである(頂点部には平らな石を両方を繋ぐように積む)。持送りヴォールトは、この技法を相対する2つの壁の方向に3次元的に拡張したものである。
支柱とまぐさ石を使った設計よりも荷重支持効率は改良されているが、持送りアーチは完全な自立支持構造ではなく、そのため擬似アーチ (false arch) とも呼ばれる。「真」のアーチとは異なり、上部構造の重量に起因する引張応力 が全て圧縮応力 に変換されるわけではない。持送りアーチやヴォールトは、重力 の影響を相殺するためにかなり分厚い壁と迫台(せり台)を必要とする。さもなくば、アーチの両側が内側に崩れやすくなる。
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古代ギリシア
古代ミケーネ (世界遺産)の遺跡には、持送りアーチやヴォールトが多用されている。例えばアトレウスの宝庫 がある。アルカディコ橋は持送りアーチを用いた、現在も使用されている最古の石橋の一つである。
アイルランド
ニューグレンジの羨道墳は墓室の屋根を持送りアーチで支持する構造であり、紀元前3000年ごろに遡る。
インド
ムガル帝国以前のアーチはまぐさ石方式か持送りアーチが主流であった。ニューデリーにあるSultan Ghari (スルタン ガハリ《イスラム 霊廟》)は紀元1231年の持送りアーチを使った墓である。
カンボジア
9世紀から12世紀に建造されたアンコール遺跡 の寺院は全て持送りアーチを使っている。
ウガリットの宮殿入り口
出典: wikipedia
カル・ペチのマヤ式持送りアーチ
出典: wikipedia
アトレウスの宝庫
出典: wikipedia
ニューデリー Vasant Kunj の持送りアーチ
出典: wikipedia
[脚注]
[1] Coe (1987), p.65.
[参考文献]
• Coe, Michael D. (1987). The Maya (4th edition (revised) ed.). London: Thames & Hudson.
ISBN 0-500-27455-X.
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