[薮入り]

「薮入り」とは、住み込みの奉公人や嫁いできた嫁が実家へ帰る事ができる休日のことで、正月の1月16日と盆の7月16日が藪入りの日にあたった。江戸時代に広がった風習で、昔は奉公人に定休日などなく、嫁も実家に帰ることはままならなかったため、藪入りだけが、大手を振って家に帰ったり、遊びに出かけたりできる日だったのだ。

■藪入りの由来 

藪入り前日の1月15日、7月15日は、それぞれ小正月、お盆という重要な祭日である。そこで、奉公先や嫁入り先の用事を済ませ、その翌日の16日は、実家の行事にも参加できるよう休みが与えられたようだ。現在のように定休日がなかった時代に、正月と盆の薮入りは、奉公人たちにとって大変貴重で待ち遠しい日であった。

薮入りの日、主人は奉公人に着物や小遣いを与え、親元に送り出す。親元では親が首を長くして子どもの帰りを待っていて、親子水入らずのひとときを過ごしたのだろう。また、親元に帰れない者も芝居見物などに出かけ、年２回だけの休みを楽しんでいた。嬉しいことが重なった時「盆と正月が一緒に来たよう」というが、昔の奉公人には、この2つの薮入りは本当に楽しみだったに違いない。

戦後(第二次世界大戦)、労働スタイルが変化し、日曜日などの定休日ができると藪入りはすたれたが、藪入りの伝統は正月休み・盆休みの帰省として残っている。

■地獄の鬼も休み

お盆の時期は、霊が里帰りして地獄にいないので、地獄番の鬼も休みだ。その頃に畑に耳をつけると、ゴーッという地熱の沸くような音がするそうで、地獄の蓋が開いて霊が飛び出してくるので、仕事をしてはいけない日とされていた。 仏教では藪入りの日を「閻魔の賽日」といい、「地獄の蓋が開き亡者も責め苦を逃れる日」であり、「罪人を責めていた地獄の鬼さえもこの日は休むから、人も仕事を休む」と考えられたのだそうだ。

■藪入りの語源は?

藪の深い田舎に帰るからという説、奉公人を実家に帰す「宿入り」がなまったという説などがあるが、定かではない。また、正月の「藪入り」に対し、お盆のほうを「後（のち）の藪入り」ともいう。 関西では6がつくので「六入り」、九州では「親見参」（オヤゲンゾ）などと呼ぶところもある。