【ロレイ】

ロレイ

 

ロレイ(Lolei、クメール語: ប្រាសាទលលៃ)は、カンボジアのアンコール遺跡において、9世紀末の主に3つのヒンドゥー教寺院があるロリュオス遺跡群のなかで最も北にある寺院である。

 

ロリュオス遺跡群には、ほかにプリア・コーおよびバコン寺院がある。

 

ロレイは、かつてロリュオスで栄えたハリハラーラヤの都の一部として建設された3つの寺院の最後のものであり、893年にクメールの王ヤショヴァルマン1世が、寺院をシヴァおよび王家の祖先に捧げた。

 

「ロレイ」の名は、古代の名称である「ハリハラーラヤ」の現代の転訛であると考えられ、それは「ハリハラの都」を意味する。

アンコール遺跡の衛星写真と建造物を示す地図

 

孤立して建つ寺院ロレイは、現在は干上がったバライであるインドラタターカ(「インドラヴァルマンの池」の意)の中心のやや北にある島に位置し、その建設はヤショヴァルマンの父である先のインドラヴァルマン1世のもとでほぼ完成していた。

 

学者らは、水域の中央の島に寺院を置くことが、ヒンドゥー教の神話において世界の海に囲まれる神々の住む須弥山(メル山)を象徴し、それと同一視する働きがあったとしている。

三叉の矛を持ったドヴァラパーラがアーチ型扉口に立っている砂岩の彫刻

両肘近くに外側を向く2体のマカラがある

 

ロレイは、1つの基壇上に集まる4基の煉瓦の塔の祠堂により構成される。王は祖先のためにロレイを構築した。1基は彼の祖父に、1基は祖母に、1基は父に、また1基は母に捧げられた。後方にある2基の塔が女性のためのものであり、前方の2基の塔は男性に対するものである。2基の高い塔が祖父母に、2基のそれより低い塔が両親に捧げられている。

 

当初、これらの塔は周壁に囲まれ、塔門(ゴープラ、gopura)を介して出入していたが、現在は外壁および塔門のどちらも残存していない。今日、寺院の隣には僧院がある。 寺院の塔は、それらの装飾的要素において知られており、偽扉や彫刻が施されたまぐさ(リンテル、lintel)、それに扉や偽扉の側面にはデヴァターやドヴァラパーラの彫像などが見られる。 まぐさやその他の砂岩の彫刻に描写された題材としては、ゾウのアイラーヴァタに乗っている天神インドラ、マカラと呼ばれるヘビのような怪物、それに多くの頭を持つナーガなどがある。 4基の塔の祠堂が交差する中心には、砂岩製の樋(とい)が十字型に備えられ、その中心にリンガが配置されている。

アイラーヴァタに乗るインドラが彫られたまぐさ

左右にはマカラから出たナーガが見られる

十字型に交差する樋と、その中心に置かれたリンガ

 

参考文献:

• 石澤良昭 『アンコール・ワット』 講談社〈講談社現代新書〉、1996年。ISBN 4-06-149295-0。

• 波田野直樹 『アンコール遺跡を楽しむ』 連合出版、2007年、改訂版。ISBN 978-4-89772-224-5。

• Rooney, Dawn F. (2011). Angkor: Cambodia's Wondrous Khmer Temples (6th ed.). Odissey. ISBN 978-962-217-802-1.

• Michael Freeman and Claude Jacques, Ancient Angkor (Bangkok: River Books, 1999.)

• Helen Ibbetson Jessup, Art & Architecture of Cambodia (London: Thames & Hudson, 2004.)


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