【ガリア帝国】

  

ガリア帝国は、260年から274年までローマ帝国から事実上分離・独立していた国家の通称である。

260年、ローマ帝国の将軍であったマルクス・カッシアニウス・ラティニウス・ポストゥムスは自立してローマ皇帝号を僭称し、 帝国属州のガリア(現在のフランス南西部のアキテーヌ地方および現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルク、北東フランス、西部ドイツなど)、ゲルマニア(現在のドイツ、ポーランド、チェコ、スロバキア、デンマークとほぼ重なる一帯)、ブリタンニア(現在のイギリス南部)、ヒスパニア(現在のスペインのバレンシア地方、ガリシア地方、カタルーニャ地方などやポルトガル北部、およびさらに南の平穏なアンダルシア地方に相当する地域)などを支配地として事実上の独立国家を造り上げた。

 

この国は274年まで4代にわたって存続した。 この時代はローマ帝国の軍人皇帝時代と呼ばれる混乱の時期であり、歴代の皇帝(ローマ元老院の承認を受けた正式の皇帝)と、 各地で自立を果たした多数の僭称皇帝が入り乱れて抗争を繰り広げていた。 その点ではポストゥムスに始まる「ガリア帝国」もそうした僭称皇帝の政権のひとつに数えられる。

 

しかし、その他の僭称皇帝たちがいずれも数ヶ月から1年程度という短命のうちに滅亡してしまったのに対して、 「ガリア帝国」と「パルミラ王国」だけは十数年にわたって実効支配を継続して事実上の独立国家としての体制を整えることに成功した。 その点でこの両国は他の僭称皇帝の政権と区別されている。