【 プロテスタンティズム 】

ルターやカルバンなどによる宗教改革に端を発し、今日では、ローマ・カトリック教会、東方正教会と並ぶキリスト教の一大勢力となった諸教派およびその思想の総称。

 

プロテスタントということばは、神聖ローマ帝国皇帝カール5世の改革否認に対する抗議宣言に由来するが、単なる抗議を超えて、自らの信ずるキリスト教信仰の中核を大胆に告白するという積極的意味をも含んでいる。

 

ルターの提唱になり、その後この教派共通の原理となったのは、

 

(1)人は、善行によってではなく、信仰のみによって神の前に義とされるという信仰義認の原理、

(2)伝承などを否定し、聖書のみが信仰の根拠であるとする聖書主義、

(3)聖職者と平信徒の区別を排し、神の前での平等を強調する万人祭司の原理、である。

 

これらの原理はすべて、神と人間との間の媒介物を除去し、人間を直接神と直面せしめるものであって、ここにいかなる権威にも屈することのない内面的価値が自覚され、封建的身分秩序からの個人の自立化が可能となった。したがって、政治的には近代民主主義、経済的には資本主義の思想的淵源(えんげん)がここに求められている。

 

他面、信仰が、恩寵(おんちょう)の客観的施設としての教会から解放されることによって、高度に主観的・心情的なものとなり、救いの確かさが見失われていったこと、また正統と異端の分裂を惹起(じゃっき)したことも忘れてはならない。近年、教会再一致への方向が模索されている。[高野清弘]


出典: 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説