【カエサル彗星(ユリウス・カエサル暗殺事件と彗星の出現-C/-43 K1)】

ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」に次のようなせりふがある。

 

「乞食が死んでも、彗星は現われないが、王侯が死ねば、天は自ら焔を放つ」

 

カエサルが死んだ後に大彗星が出現したのは、紛れもない事実である。

 

カエサルがブルータスらに暗殺されたのは、前44年3月15日であった。

そして、大彗星がローマで観察されたのは5月12日であった。 この彗星の出現に関するものと考えられる記述が、ローマとギリシアのみならず、中国と朝鮮にもあって、この彗星の出現はフィクションではないと考えられている。

 

また、この彗星の出現時に、アウグストゥスや同時代のローマ市民がすでにこの彗星の出現とカエサルの死を関連づけて見ていたという。この彗星の軌道は、現代の天文学者によって一応計算されているが、観測とそれほど明瞭に対応してはおらず、また、諸国での観測の同定も十分に出来ていないので、それほど目立った大彗星ではなかったのかもしれない。

 

なお、ハレー彗星の出現は前12年に観測されているので、カエサルの彗星はハレー彗星ではない。