【アヴェスター】

アヴェスター(Avestā)とは、ゾロアスター教の根本教典である。 なお「アヴェスター」というのは現代ペルシア語読みで、中世ペルシア語ではアパスターク(Apastāk)、或いはアベスターグ(Abestāg)と呼ばれていた。

 

[概要]

 

アヴェスター語という言語で記されている。口承伝持で長らく伝えられた後、3世紀頃に発明されたアヴェスター文字で書物に記された。しかし、イスラム教の迫害などを受けて散逸し、現存するテキストは、当時の1/4に過ぎないという。

 

[構成]

 

その内容は、善悪二元論の神学、神話、神々への讃歌、呪文等から成り、大きく分けて以下の5部からなる。

 

ヤスナ(Yasna):

祭儀書。全72章からなる。そのうち17章は、開祖ザラスシュトラ自身の作と考えられている『ガーサー』と呼ばれる韻文詩で、言語学的に一番古層を示し、特にガーサー語(Gathic Avestan, 古代アヴェスター語 - Old Avestanとも)と呼ばれる。

 

ウィスプ・ラト(Visp-rat):

『ヤスナ』に手を加えた補遺的小祭儀書。「ウィスプ・ラト」とはアヴェスター語のウィースペ・ラタウォー(vīspe ratavō)が転訛した物で「全ての権威者」を意味する。「権威者」とはここでは神々を指し、内容も神々を召喚し讃えるものとなっている。

 

ウィーデーウ・ダート(Vīdēv-dāt):

除魔書。『ヴェンディダード』(Vendidād)ともいう。『レビ記』にも比される宗教法の書で、清めの儀式次第などを説く。 聖王イマ(Yima インド神話のヤマに相当)とその黄金時代に関する神話などを含む。

ヤシュト(Yašt):

21の神々に捧げられた頌神書。言語的には『ガーサー』より新しいが、内容はより古いものと考えられている。ゾロアスター教神学完成以前のインド・イラン共通時代の神話が見られる。 第19章にはイラン最古の英雄伝説が描かれており、後の『シャー・ナーメ』にも多くが取り入れられている。

 

ホゥワルタク・アパスターク(Xvartak Apastāk):

『アヴェスター』の簡易版。『ホルダ・アヴェスター』(Xordah Avestā)とも言う。日常的に使用する比較的短い祈祷文を集めたもの。

 

参考文献:

伊藤義教訳『原典訳:アヴェスター』ちくま学芸文庫、2012年6月、ISBN 4480094601


この記事は、クリエイティブ・コモンズ・表示・継承ライセンス3.0 のもとで公表されたウィキペディアの項目アヴェスター を素材として二次利用しています。