【ホル山】

”モーセの十戒”で知られる、モーセの兄アロンがその頂で生涯を終えた山である。

 

旧約聖書にはハルーン(ホル)山についてこう書かれている。

「『アロンと、その子エルアザルを連れてハルーン(ホル)山に登り、アロンの衣を脱がせ、その子エルアザルに着せなさい。 アロンはそこで死に、先祖の列に加えられる。』モーセは主が命じたとおりにした。 彼らは共同体全体の見守る中をハルーン(ホル)山に登った。モーセはアロンの衣を脱がせ、その子エルアザルに着せた。 アロンはその山の上で死んだ。」(民数記20:25-27)

 

ホル山は現在のヨルダンの世界遺産ペトラにある Jabal Haroun(ジャバル・ハールーン)であると言われており、 そこには少なくとも13世紀までは、アロンの名を冠した修道院があったと言われる。 歴史家ヨセフスによれば,ホル山はエドム人の都市ペトラを取り巻く高い山々の一つであった。 (ユダヤ古代誌,IV,82,83 [iv,7])  伝承ではジェベル・ハルーン(「アロンの山」の意)と結び付けられている。 この山は頂が二つある赤い砂岩の山で,標高は1,460㍍ほどあり,ペトラの西南西5㌔足らずの所に位置している。

 

しかしジェベル・ハルーンは,イスラエルがカデシュ(カデシュ・バルネア)から「エドムの地の国境」にあるホル山に来たという 聖書の説明と合致しないように思える。(民数記 33:37‐39,41)ジェベル・ハルーンはエドムの国境にではなく,国内にあるのだから、 イスラエルが言い伝えのとおりこの場所にたどり着いたとすれば,エドムの領土に侵入したことになる。 しかし、イスラエル人はその前にエドムを通ることを拒否されていたから,そのようなことは起こらなかったはずだ。 (民数記20:14‐22; 申命記 2:5‐8)したがって,学者の中には,同定できそうな場所として, 斜面の急な白亜の単独峰ジェベル・マドゥラ(ハル・チン[ホル・ハ・ハル])を推す人も少なくない。 この山は死海の南西約40㌔,またカデシュ(現在のシリア西部のホムスから24km南西にあるテル・ネビ・メンド(Tell Nebi Mend)という遺跡がカデシュの跡とされる)の東北東約60㌔の所にある。