【アロン】

アロンは、『旧約聖書』のモーセ五書や『クルアーン(コーラン)』に登場する人物。モーセの兄で、預言者としてモーセを助け、イスラエルの民をエジプトから解放。 最初の大祭司となり、モーセとともに民を約束の地カナンへ導くが、自身はヨルダン川を渡ることなく死んだ。

アロンはモーセの良き協力者として伝えられているが、モーセ五書の民数記には、預言者の姉ミリアムに同調し 、異邦人を妻にしたモーセを非難する一幕も記されている。

 

アロンはメリバの泉で神を怒らせたため約束の土地に入ることが許されなかった。アロンはホル山の上でその生涯を閉じた。

 

イスラム教の聖典『クルアーン』(コーラン)では、アロンすなわちハールーン( هارون Hārūn)は過去の預言者のひとりとして登場する。 ハールーンはムーサー(聖書のモーセ)の兄で、ユダヤ教徒に律法を伝えた使徒であるムーサーを助けるために神によって預言者に 選ばれた。クルアーンにおいて、神(アッラーフ)は「ハールーンをワズィール(宰相)とした」と語っており、 イスラム共同体における指導者の政治的な補佐役であるワズィールの典型とみなされる。ムーサーよりも雄弁な人物ともされ、 ムーサーは自らの言葉を信じてくれる援助者としてムーサー自身と一緒に兄ハールーンを遣わしてくれるよう神に懇願している。 またハディースにおいては、イスラームの預言者ムハンマドはアリーに「あなたは私にとってムーサーにとってのハールーンのような 立場である。ただし私の後には預言者はいない。」と述べたという伝承がある(ムスリムの『真正集』より)。シーア派ではこの伝承は 預言者ムハンマドの第一後継者と考える一つの根拠とされている。 ハールーンの名はムスリム(イスラム教徒)にとって一般的な男性名のひとつであり、 ハールーン・アッ=ラシードらの名に用いられている。